永遠とわたし

永遠とあなた(1部ディオ)の続き  私の神は、永遠に私を闇へ逃がした。  星に見つからない、純粋なる闇に。  神よ、神よ、  今どこにいるのですか。  この問いかけを何度、させるつもりですか。  神よ、神よ。  十年過ぎても帰ってこない。  神よ、神よ。  五十年過ぎても帰ってこない。  嗚呼、私の愛しい神よ。  あと何年、私は独りで過ごさねばならないのですか。 「……DIO様?」  もう月日を数えるのをやめた頃、私は唐突に呟いた。  振り替えるも、闇に浮かぶ満月以外に、私の背後には何もない。  だけど、感じた。  私の愛するDIO様が、ついに、目覚めたのだ。どこか、遠くの地で。 「嗚呼、DIO様! やっとお目覚めになられたのですね! やっと、私を迎えに来てくださるのですね!」  暗闇の中、誰もいないところに向かって恍惚と叫ぶ私を、今日の『食料』たちがただ、恐ろしげに見ていた。  考えてみれば、私はDIO様と一日しか共に過ごしていない。神は『戻ってくるまで、君はただ待っていればいいんだよ』と言ったきり、消えてしまった。  それでも、彼が私を置いて死んでしまった、とかだったり、彼が私を捨てた、などとは全く思わなかった。神は決して、私に嘘をつかない。  だから私は、ひっそりと生きるために時たま『食料』を手に入れる以外に、何もせずただ待っていた。やろうとすればこの、あの頃からずっと根城にしている『ウィンドナイツ・ロット』を征服することも、あるいはこの年月でイギリス中を支配できたろうに、私はそうしなかった。それは私の望むところではない。私はただ、待つだけ。『食料』たちには気の毒だけれど、私の生命はDIO様のもの、勝手に絶やすわけにはいかないのだ。悪く思わないでね。  DIO様が目覚めた、と確信を持ってから、随分たった。恐らく年単位で時間が流れていただろうが、かまいやしなかった。私は既に、確か八十年以上は待っている。それ以上正確に言うことはできないが。 「……ナマエ」  ゾクッ。私の身体が震えた。そうだ、私が、この甘美な声を聴くのは、ほぼ、百年ぶり、だ。 「……DIO、様」  窓の奥に、月光を背にした、私にとっての『神』が表れた。あの時と変わらない、輝かしい金髪。鋭い瞳。色気の漂う唇の中から覗く、尖った牙が二つ。  ただ、彼の首とその下は、あの時と異なっていた。なにより、首と身体を繋ぐところに、繋ぎ目のようなものができている。  DIO様がこの百年、どこで何をしていたかなんてどうでもいい。私の元に帰ってきたことが重要である。ただ……本来の身体とは違う身体になっているのは、少し気になった。 「……ナマエ。まさか、本当に待っててくれているとは思わなかったぞ」  もう一度私の名を呼ばれ、確かに身体に電流が流れた。誰かに名を呼ばれたことすら百年ぶりだというのに、DIO様にこれ以上名前を呼ばれたら、感電死してしまうわ。 「……私は、DIO様のためなら何千年でも待ちますわ。私の身体は、あなたのものですもの……」  恍惚。  今の私を形容する言葉は、それ以外に思い付かなかった。続けて、私は言う。 「……DIO様。首から下は、どうされたのです」  これか、とほんの一瞬だけDIO様は顔を顰めた。だが、やがて笑って言う。 「宿敵の身体を、奪った。それ以外の何物でもないさ。さあ、ナマエ」  突然名を呼ばれ、誤魔化されたのか? と考える暇もなかった。もう、既に昇天してしまいそうだというのに、なんと、私の神は、嗚呼、なんてこと! 「……でぃ、お、様」  私の身体に手を伸ばした。そして、抱擁する。  何も考えられない。今、何が起こっているの? 吸血鬼同士の身体が触れあう、冷たい温もり。これは一体何? 「人間の女共との結果も気になるが……吸血鬼同士が交わった結果はどうなるのだろうな、ナマエ」  私の身体に、一体、何が起こっているの? わからない。頭が、働かない。 「……DIO……様」 「いいや、そうでなくても……私はこの百年、お前のことばかり考えていた。ナマエ、今からお前を愛してやる」  その言葉を皮切りに、DIO様が私の唇に噛みついた。  そこから先のことは何も覚えていない、思い出せないけれど……畏れ多くも、私は幸せで、死んでしまいそうであった。嗚呼、でも欲を言うならば、DIO様自身の身体で愛されたかった、なんて。私も随分、我が儘になってしまったようだ。 「愛しています、DIO様」  私はなんとか、確かにここに存在する神に向けて、そう告げた。

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