ラブアパートで夢うつつ

 ん? 私、なんでラブホなんかにいるんだ? ドラマなんかでしか見たことないけど、多分ラブホだ、これ。  目の前にいるのは、えーっと、最原くん。最原終一くんだ。  彼は顔を赤くしてこっちを見ている。何かを期待しているような。  そうだ。この世界は、私の理想の世界。夢の世界だ。  誰も死んでいない。平和な世界。  それで私は、彼と付き合っている。優しい恋人である、最原くんと。 「最原くん!」  夢心地のまま、私は彼に抱きつく。心配することなんて、何もない。 「……最原くん、私のこと、好き?」 「うん。……好きだよ、君のことが」  その言葉を疑う必要もない。だってこれは、理想の世界。夢の世界だ。  そして、最原くんはおずおずと抱き返してくれた。  そう。これだけでいいんだ。私は。これだけで私は、幸せなんだ。  みんな生きていて、私も生きていて、彼が生きていてくれるなら、それでいい。  この温もりが感じられるなら、それで――  そして私は目が覚めた。 「うーん、頭痛い……」  モノクマアナウンスでの目覚めは最悪だ。ここはコロシアイの中で、もう何人も死んでいて、そして絶望の中。控えめに言っても最悪だ。 「……でも、ちょっといい夢を見たような気がする」  内容はあまり覚えていないけど、これが私への救いかもしれない。  このコロシアイの中で、心から幸福であることなんて、ほとんどないのだから。  夢の中でくらい、幸福な気分になっても。それくらい、いいよね?  その後、私を見た最原くんは、あの夢の中のように真っ赤であったことは、また別の話。

back