ぼくとエリナの新婚旅行の見送りに。 ポコに、彼の姉。ストレイツォ、スピードワゴン。あの戦いの中で出会った人が、ぼくらのことを祝福してくれていた。 だが、いない人も多い。ツェペリさんに、ダイアーさん。彼らが生きていれば、きっと彼らもぼくらのことを祝福してくれただろう。 もちろん、父さんもそうだ。いつか父さんに、エリナを会わせたかった。その思いは、叶うことはなかったけど。 ディオは……ディオはどうだろう。もしも石仮面がなければ、彼はぼくを祝福してくれたのか? それともやっぱり、ぼくと彼はどこかで道を違えることになるのだろうか? だが、今となっては考えても仕方がないことなのかもしれない。ぼくはこの手で、ぼく自身の青春に決着をつけた。ディオはもうこの世にいない。魔物になった彼をこの世から消し去ったのは、このぼくなのだから。 なので、気がかりなことはただひとつ。 ――今も生きているはずの、ディオに仕えた彼女の姿が、見当たらないことだった。 ぼくは彼女に、結婚式には是非来てほしいと、そう言った。新婚旅行の日時も、新聞に載っているはずだ。 それでも彼女は来なかった。 彼女は今でも、ディオの館で過ごしているのだろうか。独りきりで。彼女は一体、何を考えているのだろう。再びジョースター家の使用人になってほしいとは言わずとも、もっと別の生き方は、彼女にはなかったのだろうか。それとも―― 「考えごと、ですか?」 「エリナ」 どこか心配そうにぼくの顔を覗き込むエリナ。船の上で、ぼくらは海に囲まれて揺られている。エリナのその顔を見て、ぼくはほっとしたような気持ちになった。 ぼくはこの世界を守ることができた。エリナのいる世界を。 「なんでもないよ。いや……エリナの顔を見たら、不安も吹き飛んでしまった」 「まあ、ジョナサンったら」 嘘ではない。エリナの顔を見ていたら、ぼくの心は安心に包まれていくのを感じた。 気がかりな気持ちもどこかになくなってしまったような、そんな気がしてきたから。 どうか、この平和がずっと続いてほしい。エリナのいる世界がずっと続くように。ぼくとエリナの幸せが、ずっと続くように。 そして――独りで生きている、ディオに仕え続けている彼女にも、どうか幸せあれと。ぼくは全ての人の幸せを、そう願わずにいられなかった。 ▼百年後も紅茶をあなたに(続編)