※R15。虫刺されフェチ 「ねえジョニィ聞いてよ、山に遊びに行ったら十ヵ所も虫に刺されちゃった」 彼女の家でくつろいでいると、ぼくのフェチを知ってか知らずか、ナマエはこんなことを言い始めた。彼女にぼくのフェチを告白したことはなかったはずだ。 「虫ィ?」 ぼくはわざとすっとぼけた様に言う。実際、その言葉を聞いた時点で、かなり興奮していたことは内緒。 そう、とナマエはなんでもないことのように肯定する。 「ほんと、痒くって痒くってしょーがないのよねェ。ねえジョニィ、薬かなんか持ってないの?」 「いいや、持っていないな」 仮に持っていたとしてもぼくは彼女に渡さなかっただろう。ぼくは女の子の虫刺され自体に興奮する性癖の持ち主だけれど、女の子が痒がる姿も好きである。それに、彼女の虫刺されに薬なんて塗ってしまったら、ぼくはそれを舐めることもできない。 「なあ、どこ刺されたんだい? ナマエ、ちょっと見せてくれよ」 ここよ、とナマエは腕と指を見せてきた。確かに、右腕に二つ、左の二の腕に一つ、そして左手の薬指に赤い膨らみが確認できる。よほど痒かったのだろう、プチっとした赤い膨らみの周りにはかきむしったような痕が残っていて、膨らみ自体には爪でバツを付けた様子が伺えた。ぼくが求める、女の子の虫刺されの理想に、あまりに完璧に応えている。もしかしてわざとやっているのか? なんて思ってしまうほどに。ゴクリ、と思わず唾を飲み込んだ。 「後は、太ももに四つ、左足の指にも一つあるわね。全く、なんでこう虫に好かれちゃうのかしら? 虫に好かれるくらいなら……」 そっ、と彼女は、おもむろにぼくの脚に手を伸ばした。紅潮した彼女の顔がすぐ側にある。ぼくの心臓は高鳴り、期待が高まった。 「……遊び人で女たらしのジョニィ。天才騎手のジョニィ・ジョースター。あなたに愛されたいものだわ」 そう言って彼女は彼女自身の唇をぼくのそれに押し付けた。彼女がこう、一見すると回りくどいやり方で誘ってくるのには慣れている。 ……今、この家にはぼくとナマエしかいない。道具の準備は? ……できている。それだけ脳内で確認すると、ぼくは彼女の唇に応えた。そこから先のことは、わざわざ口に出して言うことでもあるまい。 「も、もう! ジョニィ、どうしてくれんのよ……。嗚呼もう、痒い!」 一通り終わったところで、ナマエに文句を言われた。 「しょうがないだろう? ナマエには言っていなかったけど、実はぼく、虫刺されフェチなんだぜ」 他人にはそう簡単に言えないフェチではあるが、恋人同士だ。今更遠慮することでもあるまい、とけろりと言い放つ。と言うのも、ぼくはさっきまでナマエの虫刺されを舐めたり軽く噛んだりしていたのである。ぼくは大いに興奮し、気分も高まっていたのだが、ナマエにとってはどうだったのか? いつもより嬌声が大きかったような気がするのは、ぼくの気のせいだったのか? 「た、確かにいけないことしてる感じがあってよかったけど……もう! そうじゃあなくって! 全部終わってしまえばただ痒いだけじゃないの……!」 どうやら、そこまで悪い気はなかったようである。ただ、終わってしまった後が辛いだけらしい。彼女は恨めしそうにぼくを睨む。 「ジョニィ・ジョースター……今度からこういうプレイするくらいなら薬持ってきて」 「ええ、嫌だよ。痒がる君の姿を拝めないじゃないか」 ナマエはその言葉に呆れたように息を吐く。そして、ぼくを睨めつけながら、こう吐き捨てた。 「変態」 いつも余裕ぶった彼女からはあまり発せられない、余裕がない声色に、ぼくはただ笑ったのであった。
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