▼夢主誕生日ネタ。ジョルノ不在時代の護衛チーム ▼フーゴが料理上手設定。実際のイタリアの誕生祝いとは異なります この日、私はウキウキしながら家を飛び出した。 だって今日は、私の誕生日。 一生に一度の、十八歳の誕生日! 今日は、私の大好きな人たちが私の誕生日パーティを開いてくれる、ということなので、そこへ向かうことにした。 みんな何してくれるんだろう? 何をくれるんだろう? 何を貰っても気持ちだけで充分喜んじゃうんだよな、私。毎年そう。もう、みんながパーティを開いてくれるっていう事実だけで昇天してしまいそうなくらい嬉しいの! ああ、今年のみんなの誕生日には何をあげよう? 何をしてあげよう? 自分の誕生日なのに、そんなことばかり考えている自分がいた。――ブチャラティには、カラスミソースのスパゲティでも作ってあげようかな。うんと美味しいものを! ブチャラティなら、きっと喜んでくれるわ! 「ボンジョルノ!」 扉を開けて開口一番、いつもの五倍は元気よく挨拶する。そして、鳴り響くクラッカー! ……の、はずだったのに……。 「……あれ、誰もいないや」 シン、と静まり返る部屋。去年だったらナランチャあたりが真っ先に飛び出てきたのに。不安、というか、疑問が頭を駆け巡る。それでも、確かに私のために飾り付けしてある様子は伺えたので、それだけで私は嬉しくなってしまうのだった。 「……ん? なにこれ」 観葉植物の下に、プレゼントらしきものが置いてあった。木の下にプレゼントが置いてあるなんて、なんだかクリスマスみたいだな、なんてとんちんかんなことを思いながら近寄って手に取る。 「……私宛のもの、でいいのかな? 誰からのものかわからないし、開けていいのかもわからないけど……私宛のものなら……開けてもいい、かな? どうせ、誰もいないし……ねえ?」 自分で自分を悪魔の囁きでそそのかし、箱を開けることにした。中身を見て、誰がこのプレゼントを私にあげたのかを考えるのも面白いかもしれない。そして、そんなことをしているうちに皆が帰ってくるかも。不安も疑問もひとたび忘れ、プレゼントに手をかけた。 「……ん、なにこれ、お菓子?」 箱の中に入っていたのは、何の編鉄もない、市販のお菓子。大きいのが四つ入っているけど、基本的には安価なものばっかりだ。 「今年はお金なかったのかなあ、そんな中でもちゃんとプレゼントくれること自体が嬉しいや。んーと、お菓子の数が四、だからミスタではなさそう」 よく見るとリンゴパイのお菓子もあった。リンゴが嫌いなブチャラティが私にあげたりはしないだろう、と彼も除外する。私も特別リンゴが好き、というわけではないし。 「ん~~~~、ほんと、誰だろう?」 普通は直接手渡しするだろうに、ここに置いて放置しちゃったのは、誰? 「あ~~~~~~!! ナマエ、君、なにしてんだよ! あーあ、もう開けちゃったのか……。! いや、まだセーフ! セーフだから家で見ろ!」 ガタン、と扉が開いた音と共に、騒がしい声が聞こえた。 「な、ナランチャ!?」 ああもう、と頭を掻きむしるひとつ年下の少年の姿がそこにあった。彼は少し怒ったように言う。――このプレゼントは、ナランチャからだったのか! そう考えると、お菓子のチョイスも彼らしい。 「もう! 来るのが早いんだよ、全く……」 そう言って私の手からプレゼントをひったくり、強引に包装し直して、彼はこう言った。 「……誕生日おめでとう、ナマエ。ほんとはこれ、言うつもりじゃなかったんだけど……、中身、お菓子だけじゃないから。ちゃんと見てから食えよ!」 少し照れくさそうにそう言うナランチャを見て、なんだかこっちが恥ずかしくなってきた。 「……うん、ありがとう、ナランチャ」 お菓子だけではない、と彼は言う。それは、家に帰ってからの楽しみとしよう。 「ところで、みんなはどこ? まだ来ていないの?」 「ああ、みんなならそろそろ来ると思うよ。実は、昨日の準備の時点で買い忘れたものがあったらしいから、それぞれ買いにいったみてーだ」 ふうん、と相槌。みんな、まだかな、と思いながらナランチャと他愛もない話をしていた。 「今戻ったぜ! ……ってナマエ、もう来てたのか!? 早いな」 「チャオ、ナマエ。そんなにパーティが楽しみだったんですか? でも、ブチャラティはまだ来ませんよ」 扉が開く音がしたので、そちらを見るとミスタとフーゴがいた。……ブチャラティはまだ来ない、と何気なく言ったフーゴにドキッとする。もしかして、私の好きな人、バレてる!? ナランチャにしか相談していないのに。ナランチャがこういうことを言いふらすとも思えないし……。 「はい、ナマエ。ぼくからの誕生日プレゼントです」 「俺からもだぜ!」 ミスタとフーゴが私にプレゼントを渡す。すごく嬉しくて、思わずニヤけてしまった。 「わ、二人ともありがとう! 家に帰ってから開けるね!」 「おいおい、オレのはもらう前から勝手に開けてたくせに……」 ナランチャがこう言うと、ミスタが「お前、どんだけプレゼント楽しみにしてたんだよ!」とからかうので、一同が一斉に笑った。 「もうやってたのか」 そう言って入ってきたのは、アバッキオだ。気だるげにプレゼントを渡す。 「ほら、感謝しろよ」 「わー! アバッキオありがとう! 中身なに?」 「紅茶セットだ」 「……こ、紅茶」 そこで私の顔は、何故かひきつった。いや、ほんとほんと、何でだろう。自分でもよくわからないな、真面目な話。 「んだよ。オレの茶が飲めねえってか?」 そうとは言っていないけど……なんだろう、この頭に鳴り響く警告は? 本能的に彼のお茶は危ないと感じているような……そうでもないような? 微妙な心境になりながらも、ありがとう、と言おうとするとまた扉が開いた音がした。 「おや、ナマエ。もう来てたのか。遅れてすまない、誕生日おめでとう」 「ぶ、ブチャラティ! ありがとう!」 声が上ずる。顔が上気するのがわかる。 ちらり、とみんなの方を伺うと、ほぼみんなが生暖かい目で見守っていた。ち、ちょっと待ってよ! 私がブチャラティのことを好きだってことは、ナランチャにしか相談してないはずなのに……! もしかして、私の態度がバレバレってこと!? 「オレからは……これだ。お気に召してくれると嬉しいんだが」 そう言って、ブチャラティは……なんと、花束を取り出した。……こ、この、イタリアーノが……!! 恐らく、私の顔は今まで生きてきた中で一番赤くなっているだろう。ブチャラティは、なんの下心もなく、こう言ったことをサラリとやってのけてしまうからずるい。つい、期待してしまうのだ。 「あ、ありがとう! す、すごく嬉しいよ……! 綺麗な花! なんて花なの?」 赤とピンクと白が混じりあった、愛らしい花束。それを受け取って、私はブチャラティの顔を見る。 「ガーベラだ。家に帰ったら、花言葉を調べてみると良い。見た目も綺麗だが、花言葉も素敵なんだ」 ガーベラ。見た目もそうだが、名前の響きもかわいらしい。 「ブチャラティ、ありがとう。……本当に、素敵だね」 「さーて!! これでやっと全員揃ったし、パーティを始めるぞー!」 ナランチャがそう言い始めたので、パーティが始まった! みんなからのプレゼントはまとめて置いておき、ブチャラティからの花束は……どうしよう? そのまま置いておいて、枯れるなんて嫌だし……。ということで、コップに水を汲み、とりあえずそこに入れておく。 「っしゃあ! それでは始めまーす! まずは、今日の主役のバースデーケーキです! わー!!」 「ええ!? 今日の主役は私じゃなくてケーキなの!?」 「間違えた! 今日の主役のナマエが、バースデーケーキのロウソクを消します!」 ナランチャは多分、本日の主役がケーキだと思っている。それがなんだかかわいくて、面白くて、つい笑った。ナランチャなら許せる。 「どうせ君が楽しみにしてるのはケーキなんでしょう……ナランチャ」 と、言いながら、フーゴがキッチンの奥からやってきた。その手にはイチゴの乗ったケーキ、その上には十八本のローソク。 「フーゴの作ったケーキ、いつも思うけどうまそうだよなァ」 「イチゴのケーキは得意なんですよ、ミスタ」 「ほら、ナマエ、座って」 お誕生日席に座らされ、嫌でも目立つ。いや、本当にお誕生日だからいいんだけど! 「ありがとう、フーゴ」 そう言うと、誰が言うでもなく電気が消えた。ローソクの炎だけがあたりを照らす。 「ナマエの十八歳を祝って。ナマエ、誕生日おめでとう」 暗がりの中でそう言ったのは誰だったか。その声を皮切りに、皆が歌い始めた。 Tanti auguri a te Tanti auguri a te…… (ハッピーバースデートゥーユー)…… 「ハッピーバースデーディア『ナマエ』、ハッピーバースデートゥーユー……」 「おめでとう、ナマエ」 誰がそう言ったか、なんて、わかっている。ブチャラティの声だ。 一気に恥ずかしくなって、一気にローソクの火を消した。部屋がパッ、と暗くなる。 パチパチ、拍手の音がした。そして電気がついた途端、クラッカーの音が! 「ありがとう、みんな! 本当に、大好き! ありがとう!」 気づいたら、私はそう笑っていた。 そこからはもう、てんやわんや。ケーキをとりわけ、皆で食べた。フーゴのつくるお菓子はいつ食べてもおいしいのだが、今日のケーキは格段においしい。 ナランチャが一番はしゃぐ。なんだかんだで一番楽しんでいるのは彼かもしれないが、私も彼の楽しんでいる姿を見てて楽しくなれるから、それでいいや、と笑う。 ミスタもナランチャと一緒にはしゃぐ。そして、なんとフーゴも一緒に踊り出すのだ。あの三人は、かなり仲が良いと思う。あの躍りは一体なんなのか……、あとで聞いてみよう。 私は、主にその三人と一緒にはしゃぐけれど、私が一番気になるのはブチャラティで。ブチャラティは、少し離れたところでアバッキオとお茶を飲んでいた。……アバッキオのお茶を飲んでいたわけではないよ? アバッキオもブチャラティも、いい大人だから、こういうことはあまり楽しめないのかな、と少し不安になる。いや、ミスタもどちらかと言えばこちらより……? やっぱり、十代と二十代では差があるのかも。 「ブチャラティは、いいの? アバッキオも……」 私がこう言うと、アバッキオはこう言った。 「実際、今日だって仕事がないわけではないのに、ブチャラティはわざわざオメーのために昨日と明日に回したんだ。それだけで感謝することだな」 「まあまあアバッキオ。なあナマエ、オレたちのことはいいから、みんなと楽しんどけ。オレのことは今は構わなくていい。今は、な」 そう言われて、なんだかきょとんとする。ええ、そう言われても……どうしよう? 「ほら」 そうブチャラティに囁かれて、私は、釈然としないまま三人の元へ行くのだった。 楽しい時間は、あっという間に過ぎていく。実際、凄く楽しかったのに、何をしたかパッと思い出せない、ということはないだろうか? 今の私がそれだ。ずっと楽しい時間を過ごしていたのに、気づいたら帰路についていた。朝のあの気持ち、戻ってこないかなあ……とみんなのプレゼントを手にして、家に帰る。 「んー、ナランチャからのプレゼントは……あ、お菓子にメッセージがついてる! 後で読もうっと! アバッキオからは……本当だ、紅茶だ。今度飲んでみようかな。えーと……フーゴからは、ゲッ、参考書……? まあ、ありがたいけど……ナランチャじゃあないんだから……。で、ミスタからは……あ、これお財布? あまり高くはないけど、私が欲しいって言ったものだ! よく覚えてたなあ。大事にしよう。そして……」 ブチャラティからの花束。こんなの普通、送られたら勘違いしてしまいそうになる。このかわいらしい花の名前は……確か、ガーベラ。 「花言葉、調べるといい、って言ってたよね……調べてみよう」 赤とピンクと白のガーベラ。ディスプレイの一部に、ガーベラの花が咲く。それと一緒に現れた、その、花言葉を表す活字の文字列を見て、私は息が止まった。 「えッ……!?」 文字列は確かに、こう並んでいた。『純潔』、『神秘』、『燃える神秘の愛』、『熱愛』、そして『思いやり』。 「これを、ブチャラティが……ッ!?」 ブチャラティは、確かに「花言葉を調べてみると良い」と言っていた。天然イタリアーノがもたらした、下心もなにもない偶然……では、ないと考えてよさそうだ。つまり、これは、これは、……これは。 「期待してもいい、……って言うことなのかな……」 ガーベラの花束を生けて、私はそれに口づけを落とし、呟いた。 花束は確かに、私の方を向いて、誇らしげに咲いていた。
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