半年。 ディエゴと私が義理ではあるといえ、正式に「親子」と呼ばれる間柄であったのはたった、半年の話だった。 私の義母が、死んでしまったから。 ディエゴと結婚して、たった半年で。 結婚式の様子なんて、正直ほとんど見ていなかった。ただぼんやりと、男と義母が誓いを交わす様を眺めていただけ。 浮かれきった年老いた義母。こんな若い男なんかに骨抜きにされて、なんとも情けない。 そして……あーあ。見てられないわ。 私はこれからこの男と、お義母さまと、三人で暮らさなければならないのか。……頭が痛い。 気づいたら結婚式は終わっていた。そして我が家にのうのうと居座る、ディエゴ・ブランドー。彼に対して睨みつけると、男はニコリと笑いかけてきた。嗚呼、こうやって女を落としてきたんだろうな。無論義母のことも。その男が心から笑っているようには見えない。 つんと澄ましてみせた。背を向ける。 男が本当に笑ったような気がしたが、無視をした。 夕食の時間は最悪。お義母さまがデレデレと男に骨抜きにされる一方、私に対しては異常に厳しくテーブルマナーを押し付ける。……なによ、これくらい淑女として許容範囲内じゃない。一応。 「まあまあ愛しい人、そこまで厳しく言うことはないでしょう」 「あら、そう? ディエゴがそういうなら……」 甘ったるく作った声の男と、本気で惚れ惚れしている八十三歳の老婆の姿を思い浮かべてほしい。思わずウゲッと言いかけた。愛しい人、ですって! 「……ごめんなさい、今日は食欲がわかないの。ご馳走様」 そういって部屋へと駆け込んだ。義母が呼び止める声など、無視だ、無視。 部屋でベッドにゴロリと寝転がる。着替えるのもお風呂に入るのもめんどくさい。これからどうすべきか、そう考えて頭痛が起きた。もう寝てしまおうかと考えた、その時。 コンコン。 「……誰? 使用人? 悪いけど放っておいてちょうだい」 「……オレですよ、ナマエ」 予期せぬ低音が響き、ゾッとした。この声はまさしくディエゴ・ブランドー……。 「……何? 私に何の様なわけ? お義母さまの所へと行ってあげないよ。愛しているんでしょう?」 ベッドから立ち上がり、ドアへと近づいた。ドアは開けずに、仁王立ちで声をかける。精一杯皮肉を込めて。 「……ハハ。『愛しい人』が、あなたと仲良くして欲しい、とのことで。それで是非お話でも、と思いましてね」 男が発する言葉に対し、苛立ち混じりに返答する。もはや、この男に返答すること自体が億劫だ。 「何故私があなたとお話しなければならないのかしら? お義母さまのところに行ってあげなさいよ。できれば帰ってちょうだい」 背を背け、あとは何を言われても無視することにした。すると男は笑ってこう言った。 「では、また明日。おやすみなさい、ナマエ」 そして、男が立ち去ったのがわかった。 本当に、癪に障る男だ。淑女にあるまじき行為と知りながら、盛大に舌打ちをして、ベッドにダイブする。疲れが溜まっていたのだろうか。すぐに、意識が眠りの底へと沈んでいった。