「ちっ……弱い奴らでも、こうもたくさんいるとなかなか鬱陶しいわね! イオ!」 マーニャさんが呪文を唱えると、目の前にいたピクシーたちはあっという間に爆発し、一撃で沈んだ。踊りを舞うような優雅さで、戦い慣れた様子で戦場を舞う姿に、思わず息を呑む。 やっぱりこの姉妹は――強い。 「姉さん! これくらい弱い奴らだったら、私の武器でも十分なくらいなのに! あんまり呪文を使いすぎて、あとで息切れしても知らないわよ!」 「大丈夫よ! それより戦闘を長引かせて、あの子たちにケガさせるわけにもいかないでしょう?」 「もう」 姉妹の息の合ったコンビネーションに思わず見とれてしまった。私も、いつかあれくらい強くなれるだろうか? 「……! まだ一匹残ってる!」 ほとんどの敵が倒れていて油断していたところ。マーニャさんの呪文が当たらなかった敵が、こちらに向かっていることに気がついた。 「任せろ」 私が駆け出そうとするより早く、ソロは走ってそいつに向かった。銅の剣で一撃を入れる――だが、倒れない。ピクシーはギラリと目を光らせ、ソロに反撃しようと襲いかかった。 「ソロ!」 「任せてください」 私が思わず叫ぶと、ミネアさんが大きな槍で、ピクシーを突き刺した。 彼女の細腕でそんな槍を振り回せるのか――そう思っていたが、彼女は問題なく武器を使いこなしている。 間違いなく、ピクシーは倒れた。倒れた魔物の側には、お金が少し、落ちていた。 「これで全員仕留めたわね……ソロ、ナマエ、怪我はない?」 そしてマーニャさんは息を吐く。その颯爽とした姿に、思わず息を呑んだ。 「……強い」 圧倒されてしまう。質問に答える余裕もなく、私はぼうっとしてしまっていた。 「そんなことを聞いてるんじゃないってば。ふたりとも、怪我はないのね?」 「……大丈夫です」 ソロは悔しげに立ち上がる。自分たちがまだ弱いことを、痛感したのだろうか――少なくとも、私はそうだった。今回の戦闘、私はまともに動くことすらできなかった。私は呆然としながら、無意識に拳を握りしめていた。――私、ソロと共に戦うどころか、守られっぱなしじゃないか。 「では、気を取り直して。食事としましょうか」 冷静に言ったミネアさんの言葉にはっとする。そういえばそうだった。私たちは、食事をしようとしていたのだった。 確かに、今は気分を変えたほうがいいのかもしれない。このまま後悔したところで、何も始まらないのだから。 姉妹が持っていた食べ物には、パン、焼いた肉、チーズなどがあった。 「ソロさん、ナマエさん。何か食べたいものはありますか? 少しくらいしかありませんが……」 「……これ、俺たちも食べていいんですか?」 「当たり前でしょ! 元はといえば、あんたたちになんか食べさせたいと思ってご飯タイムにしましょって言ったんだから」 「……私、最初はマーニャさんがお腹すいたって言ってた気がするんですけど」 「あら? そうだったかしら? いいじゃない、食べましょ。ソロもナマエも、好きなの食べていいわよ」 そして、今度こそ柄の間の休息となった。旅に出て以来あまり食べられていなかったが、なぜか、今回は比較的食べられたし、美味しいとすら思った。少し様子を見た限り、ソロもそう感じているように見える。 戦いで空腹を感じたのかもしれないし、マーニャさんが場を明るくしてくれているからかもしれない。 「あんたたち、筋は良さそうなんだからさ――ソロが勇者だからってだけじゃないわよ、ナマエだって。ちゃんと食べてちゃんと休んで、そして戦いましょ。ね?」 そして彼女は笑う。その様子を見ていると、なんとなく、心が軽くなっていくような気がした。 食事を終えた後、私たちは出発した。その後、幾度となく敵に遭遇したが―― マーニャさんの攻撃呪文、ミネアさんの物理攻撃と補助呪文によって、敵がどんどん倒されていく。戦い慣れた彼女たちに比べると力の弱さが目立っていたソロも、実戦を重ねるにつれ、段々と強くなっていくのが目に見えて分かる。あの村にいた頃の修行の成果が、少しずつ発揮されていっているのだろう。 ……だけど、私は。 「うわ、硬っ!?」 敵に一撃入れたと思ったが、せっかくの聖なるナイフの攻撃も、私の非力さにより通らない。攻撃されて怒ったさそりアーマーが、私に反撃しようとしたが、なんとか躱す。……少しだけ、ダメージを負ってしまった。 「メラ!」 と。ソロが、使えるようになって間もない炎の呪文で、さそりアーマーにダメージを与える。敵の意識が私から逸れたところで、マーニャさんのギラによって、敵は焼き尽くされた。 「大丈夫か、ナマエ」 「……うん、大丈夫。少しだけ、かすっただけ……」 戦闘後、ソロに気遣われてしまった。身体に負ったダメージよりも、敵とまともに戦えなかったことのほうが、ショックであった。 それに気づいているのだろうか。姉妹は優しく言う。 「気にすることはないですよ、ナマエさん。実戦を重ねていけば、きっと強くなります」 「そうねー。あたしだって、最初はナマエよりも力が弱かったと思うもん」 「……ありがとう、ございます」 身にしみるほど、優しい言葉。だけど、私の気は晴れなかった。 ソロはこれからもっと強くなるだろう。その力があるということは、昔からわかっている。だって、だからこそ彼は勇者と呼ばれ、そのために彼の命が狙われて、私たちの故郷は襲われた。 マーニャさんとミネアさんだって、私よりもずっと強い。私よりも力があるし、比較的非力なマーニャさんは、攻撃呪文に長けている。ミネアさんも、私には扱えそうもないホーリーランスという武器を使いこなしているし、彼女は回復呪文が得意だ。 だけど、私には。……強い武器も、呪文も、まともに使える気がしなかった。 私が唯一覚えている呪文、アストロンは、普段の戦闘でそこまで役に立つわけではない。あの温かい故郷にいた頃、私は自分の使命を果たすために、アストロンの呪文を必死で覚えようとしていたが――そもそも、私には呪文全般が向かないらしいというのは、その時からわかっていた。だからといって、私に力があるわけでもない。 力も、魔力も足りない。唯一の利点が、少々素早さが高いという程度。 そんな私に、一体何ができるというのだろうか。考えてみても、答えは出そうになかった。 「ほらナマエ、手を出せ」 「手?」 ぶっきらぼうなソロの声に、素直に従う。私よりも大きな掌が、私の手を包んだ。 「ホイミ」 そして。温かい光に包まれ、私の身体に刻まれていたダメージが、癒やされていった。 「ありがとう、ソロ。……ホイミ、使えるようになったんだね」 「ああ。……村のじいさんに、基礎は教えてもらっていたからな」 そして、少しの沈黙。もうない私たちの故郷のことを、どうしても思わずにはいられない。 それでも私たちは進む。それぞれの想いを胸に秘めて。 「もうすぐ日が暮れそうですね。夜になると敵が強くなりますし、今日はここで休んで、明日に備えるのがいいでしょうか」 ミネアさんの提案は、ここで一旦野宿することだった。旅の中では、火を焚き、交代で見張りをしながら野宿をすることも、あるのだという。 とはいえ。今回は、そういうことにはならなかったらしい。 「ミネア、見て! あそこに建物があるわよ」 マーニャさんが指さした方向を、私たちは見る。そこには確かに、宿屋と思わしき建物があった。 そして、その先に。南の方には、広大な砂漠が広がっているのが見えた。 「あの先に、砂漠が……」 宿屋の方に駆けていき、私は呆然と砂漠を見る。……山の中で暮らしていた私たちにとっては、初めて見る光景であった。 「あの宿屋、馬車が止まってるな」 「ということは、あの馬車を借りられれば、砂漠を越えることもできるかもしれないってこと?」 「そういうことだろうな」 ソロが冷静に呟く。馬車に繋がれた馬が、寂しげに鳴いていた。 何はともあれ、今日はここで一泊することになりそうだ。 幸い、魔物たちを倒したときにゴールドは溜まっている。宿屋で身体を休めつつも、あの馬車を借りられるよう、持ち主に交渉したいところだ。 今日の戦闘で私は、あまり役に立てなかった。敵からの攻撃の身のかわし方ばかり上手くなり、防御の硬い魔物に対してはほとんどダメージを与えられなかった。 私はもっと、強くならなければならない。この先の旅のことを考え、私は、心に覚悟を決めた。 ▼ソロは レベル4に あがった! ▼ナマエは レベル3に あがった!
| ソロ | ナマエ | |
|---|---|---|
| 職業 | 勇者 | 旅人? |
| 強さ | HP:25/34 MP:5/13 | HP:27/27 MP:8/8 |
| 攻撃力:27 守備力:19 | 攻撃力:18 守備力:12 |
|
| 装備品 | E銅の剣 E皮の鎧 E皮の帽子 | E聖なるナイフ E布の服 E皮の盾 |
| 道具 | はねぼうし 薬草 布の服他 | 薬草 毒消し草 |
| 呪文 | ニフラム ホイミ メラ | アストロン |
| レベル | Lv.4 | Lv.3 |
所持金:302G