白い冠

「ほら、できたわよ」  そう言って、桃色の髪を揺らしながら、花畑の真ん中に座る幼馴染は私に囁いた。そして彼女――シンシアは、にっこりと微笑みながら、さっき作ったばかりの花冠を私の頭に乗せる。 「わあ、すごい……! ありがとう、シンシア」 「どういたしまして」  そう言ってシンシアは目を細める。彼女の嬉しそうな表情を見て、私も嬉しくなると同時に、彼女の笑顔に見とれてしまった。  シンシアが作ったシロツメクサの冠を乗せて笑っている私を見て、もう一人の幼馴染――後に勇者と呼ばれるひと――は、おもむろにシンシアにこう頼んだ。 「なあシンシア、俺にも作ってくれよ」 「いいわよ」  そしてシンシアはもうひとつ、花冠を作り始める。これが彼の頭に乗るのか、と思うと少し愉快な気持ちになった。緑の髪に白い冠が乗る様子は、本当に花が咲いているようで似合うだろうが……。正直言って、彼の凛々しい顔に花冠が似合うとは思えない。  くく、と笑いを堪えきれていない私を見て、彼は少し不機嫌になってこう言った。 「……なんだよ、文句でもあるのか?」 「別に――?」  そうからかう私のことが気に入らないらしく、彼は口を開きかけた。しかし、それはシンシアによって遮られることになる。 「はい! あなたの分もできたわ。よく似合っているわよ」  彼女は彼の頭に冠を乗せた。やっぱり綺麗な緑の髪には白い花がとても似合う。そして、思ったより彼の表情にも花冠が似合っていることに、少しだけ驚いた。 「意外と似合うものだね」 「失礼な奴だな」  そんな私たちを見て、シンシアは楽しそうに笑った。そんな彼女を見た私たちも、まあいいかと笑う。  そんなことをしていると、彼がふと呟いた。彼の視線の先では、シンシアの頭の上の、はねぼうしが揺れていた。 「シンシアは自分の分を作らないのか? 花冠」 「え? 私はいいわよ」  シンシアがそう照れくさそうに笑うのを見ると、彼はいいことを思いついた、と言わんばかりにこう告げる。 「じゃあ俺が作ってやるよ、作り方教えてくれ」 「え、いいなあ。ねえシンシア、私にも教えて」  彼が突然こんなことを言い始めても、それに私が思わず口を挟んでも、シンシアは嬉しそうに笑うだけだった。 「ふふ、いいわよ」  シンシアはにこにこしながらシロツメクサを摘み始めた。そして、その白い手を使って、冠の形に織り成していく。その姿はまるで、花の妖精が冠を作り出しているようにも見えて、思わず手を止めて見とれてしまった。 「――できた! ねえシンシア、私の冠を被って?」 「……俺がシンシアの花冠を作るって言っただろ」 「えー? じゃあシンシアが決めてよ」  シンシアの花冠に比べるといくらか不格好ではあるが、なんとか花冠を完成させた私たち。私と彼がそう言うと、シンシアは突然神妙な顔をして黙りこむ。少しドキドキしながら待っていると、彼女は突然悪戯っぽい笑みを浮かべ、私たちに飛びかかってきた。 「……うふふ。私は、二人とも大好きよ!」  そしてシンシアは、私と彼が作った花冠を、二つとも頭に乗せた。そして私たちは、花畑に思い切り倒れ込むことになる。たくさんの花の甘い香りが鼻腔をくすぐり、色とりどりの花びらが舞い上がった。 「え、ちょっとシンシア?」 「おい、別に俺はそんなつもりで言ったわけじゃ……」  私たちがそう困惑しても、彼女はただ嬉しそうに笑うだけ。やがて彼もまあいいか、なんて呟いて顔を綻ばせ、そして私も幸せな気持ちになって、そっと笑みを零した。  いつまでも、いつまでも、いつまでも。大好きなこの村で、私たちが三人で笑える、この幸福が続きますように。

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